🌾農業生産工程管理


🌾農業生産工程管理(GAP:Good Agricultural Practices)は、安全で持続可能な農業を実現するための管理手法です。日本では「GAP」として広く知られており、農林水産省もその導入を推進しています。

🧭GAPの目的と役割

  • 食品の安全性向上:農薬の適正使用、異物混入防止、水質管理など
  • 環境保全:施肥管理、廃棄物処理、土壌保全など
  • 労働安全の確保:作業手順の明確化、保護具の使用、事故防止対策
  • 農業経営の改善:作業の効率化、コスト削減、記録によるトレーサビリティの確保
  • 人権保護:差別のない職場環境、雇用契約の明文化など

📋主なGAPの種類

種類特徴
JGAP日本版GAP。食品安全、環境保全、労働安全、人権保護、農場経営管理に対応
ASIAGAPアジア地域向け。JGAPよりも国際基準に近く、輸出にも対応
GLOBALG.A.P.国際標準。海外輸出や国際イベントでの食材供給に必須

🔄PDCAサイクルによる継続的改善

  1. Plan(計画):農場ルールの策定(例:収穫時の飲食禁止)
  2. Do(実践):ルールに従って作業し、記録を残す
  3. Check(点検):ルールの遵守状況を確認
  4. Action(改善):問題点を修正し、次回に活かす

🧮こちらがJGAP・ASIAGAP・GLOBALG.A.P.の違いを比較した表です。

項目JGAP(日本GAP)ASIAGAP(アジアGAP)GLOBALG.A.P.(グローバルGAP)
🌍 発祥・運営団体日本GAP協会日本GAP協会(国際展開向け)ドイツのFoodPLUS GmbH
📦 対象品目青果物、穀物、茶青果物、穀物、茶農作物全般、畜産、水産養殖など
🛡️ 認証の目的国内流通・食品安全・環境保全・労働安全国際流通対応・GFSI承認取得(※2025年返上)欧州輸出・国際流通・世界基準の信頼性
🧾 認証制度第三者認証制度第三者認証制度第三者認証制度
🧭 国際基準との関係日本独自基準GFSI承認(※2028年で終了予定)GFSI承認・国際標準
🏷️ 認証マークの使用国内販路で信頼性向上アジア圏での販路拡大に有利欧州・国際市場での必須条件
📉 今後の動向JGAP2022+SA規格で持続可能性強化JGAPへ一本化予定(2028年終了)GFSI対応のSmart規格などで継続
💰 認証取得のコスト比較的低コスト中程度(国際対応のためやや高め)高コスト(審査費用+旅費など)
🧑‍🌾 推奨される農場規模小〜中規模農場中〜大規模農場輸出志向の大規模農場

📌参考:ASIAGAPは2028年に運用終了予定で、JGAPへの移行が推奨されています


🧑‍🌾「農産物栽培工程」「農業生産工程管理(GAPなど)」との違いを分かりやすく比較しています。

項目農産物栽培工程農業生産工程管理(GAPなど)
🔍 定義作物の育成に関する具体的な作業工程安全・品質・環境・労働などの管理体制とルール
📅 対象範囲種まき、施肥、潅水、収穫などの日常作業作業記録、労働安全、環境配慮、食品安全など多分野に渡る管理
🎯 主な目的作物を効率的かつ健全に育てる持続可能で信頼性の高い農業経営の実現
📝 記録・監査の有無必須ではない(記録は任意)記録・点検・外部監査の実施が重要
🧰 関連ツールや基準農業機械、栽培カレンダーなどJGAP、ASIAGAP、GLOBALG.A.P.などの認証基準
🧑‍💼 経営への影響作業効率や収量に影響ブランド信頼、販路拡大、輸出対応など経営戦略に直結
🌱 持続可能性との関係環境負荷や社会的責任の視点は弱い傾向環境・人権・地域社会との調和を重視
🧯 労働安全・衛生管理暗黙知や現場対応が中心作業手順の明文化、安全装備の整備など体系的に対応

農産物栽培工程が「現場の技術的な作業フロー」であるのに対し、農業生産工程管理は「経営・倫理・安全まで含めた包括的なガイドライン」とも言えます。


🌿グリーンハーベスター(GH評価制度)は、認証ではなく“農場の健康診断”としての評価制度です。農業生産工程管理を実践したいけれど、認証までは踏み切れない…という農家や団体にとって、非常に有効な選択肢です。

✅GH評価制度の特徴

項目内容
📋制度の目的農場の現状を可視化し、改善点を明確にする「GAP教育システム」
🧪評価方法108項目を5段階評価(0〜4)+加点方式。減点方式で総合点を算出
🧭評価基準農林水産省の「国際水準GAPガイドライン」に準拠
🧑‍🌾対象個人農場、生産組織、共同施設など幅広く対応
📉評価結果総合点(1000点満点)+詳細報告書+改善提案。合否はなし
🌟評価表示星の数で農場の管理レベルを視覚化(例:☆☆☆)
🧠教育性GAP指導員の育成や、農場主の自己啓発に活用

🌱GH評価のメリット

  • 認証ではないため、柔軟に導入可能
  • 改善の優先順位が明確になる
  • 地域農業の担い手育成や、産地全体の底上げに貢献
  • 将来的なJGAPやGLOBALG.A.P.取得の準備にもなる

🌱農業生産工程管理(GAP)=認証制度と思われがちですが、実は認証を受けなくても実践できるGAP的な取り組みがいくつも存在します。以下に、認証以外の代表的な取り組みをまとめました。

🛠️ 認証以外の農業生産工程管理の取り組み

取り組みの種類内容・特徴
自己点検・記録管理農場独自のルールを作成し、PDCAサイクルで改善。認証は受けないがGAPの考え方を導入。
都道府県版GAP地域独自の基準に基づく取り組み。認証制度ではなく、行政支援や研修が中心。
農協・生協・企業版GAPJAやイオンなどが独自に定めた基準。内部チェックや指導が中心で、外部認証は不要。
TRY-GAP(農水省)認証取得前の練習的な取り組み。記録や点検を通じてGAPの考え方を学ぶ。
オンライン学習ツール農水省やGAP協会が提供するeラーニング。実践力を高めるが認証とは無関係。
地域のGAP推進事業研修・補助金・コンクールなどを通じてGAP的な取り組みを促進。認証取得は任意。

これらは「認証を受けなくてもGAPの考え方を活かす方法」として、特に小規模農家や地域密着型の農業経営に向いています。


🌾農業生産工程管理(GAP)を評価する仕組みは、認証制度だけでなく、自己点検や行政支援など多様な形で存在しています。以下に代表的な評価方法をまとめました。

📊農業生産工程管理の評価方法一覧

評価方法内容・特徴
第三者認証制度JGAP・ASIAGAP・GLOBALG.A.P.など。外部審査員による評価で信頼性が高い。
自己点検・内部監査農場自身がチェックシートを使って評価。PDCAサイクルで改善を図る。
都道府県版GAP評価制度例:ぎふ清流GAP評価制度など。地域独自の基準で評価し、行政が支援。
TRY-GAP(農水省)認証前の練習的な評価制度。記録・点検・改善を通じてGAPの考え方を学ぶ。
GAP指導員による評価指導マニュアルに基づき、現場でのリスク評価と改善提案を実施。
国際水準GAPガイドライン準拠評価農水省が策定した5分野(食品安全・環境保全・労働安全・人権保護・経営管理)に基づく評価。

🧭評価の視点(国際水準GAPガイドラインより)

  • 食品安全:農薬管理、異物混入防止、衛生管理
  • 環境保全:施肥・廃棄物管理、生物多様性配慮
  • 労働安全:作業手順、安全装備、事故防止
  • 人権保護:雇用契約、差別防止、教育機会
  • 農場経営管理:記録管理、コスト削減、持続可能性

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komuro
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ASIAGAP指導員

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